旅館業法による民泊“簡易宿所営業”のメリット、デメリットなど…
今回は、旅館業法による民泊について、メリット、デメリット、主な要件などを書いていきます。
旅館業法に於ける旅館業とは、“宿泊料を受けて人を宿泊させる営業”と定義されており、ここで言う宿泊とは、“寝具を使用して施設を利用すること”とされています。
旅館業の種別としては、主に下記の4つのパターンがあります。
1.ホテル営業
洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
2.旅館営業
和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
3.簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
4.下宿営業
施設を設け、1ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
上記の分類で言うと、旅館業法による民泊は、簡易宿所営業で許可を取得するのが一般的です。
仮に、住宅を民泊利用する場合であっても、有償で繰り返し宿泊所として提供する民泊サービスを行う場合は、原則 旅館業に該当するため、旅館業法に基づく許可を取得する必要があります。
■旅館業法による民泊(簡易宿所営業)のメリット
まずは、何と言っても営業日数制限がないところでしょう。
民泊新法による民泊では、年間180日までという、営業日数の上限が定められています。
民泊事業で、しっかり収益を出していきたい事業者にとっては、この営業日数の制限は、大きなネックになりますよね。
その点、簡易宿所営業では、365日営業することが可能なので、ここは最大のメリットだと言えます。
もう1つは、特区民泊などでは滞在日数が2泊3日以上という条件があります。
しかし、簡易宿所営業ではその制限もなく、1泊からの営業も可能ですので、運用の自由度も高く集客面に於いても有利だと言えます。
■旅館業法による民泊(簡易宿所営業)のデメリット
簡易宿所営業に於けるデメリットを強いて挙げるならば、民泊新法に比べると申請の難易度が高く、設備投資のコストがかかるところだと思います。
自治体によって大きく異なりますが、用途地域による営業が許可制限などもあります。
旅館業法に基づく民泊は、都道府県などの保健所に必要書類を提出し営業許可を取得しなければならず、旅館業法の厳しい基準を満たす必要があります。
また、他の民泊に比べて、多くの住宅図面が必要です。
その他、営業者の人的要件および立地条件に関する規定等があり、クリアすべき項目は多くあり、設備面での検査をクリアするための、非常用照明や消防設備など…コスト面も、やや負担がかかる場合もあります。
■旅館業法による民泊(簡易宿所営業)の主な要件
簡易宿所営業の許可申請をする際、国籍や法人の種類は問われないため、日本国籍を持たない外国人や宗教法人、NPO法人などの各種法人であっても申請が可能です。
●構造設備要件
簡易宿所営業の設備要件は下記のようになっております。
この要件とは別に、各自治体の条例により、独自のルールが追加されているケースが多いので、その点は注意が必要です。
1.消防設備
・火災報知器や消火器の設置が義務付けられています
※万が一の火災に備えて、これらの設備が適切に配置され、機能する状態であることが必要
・明確な避難経路が設定されており、避難口や避難経路の案内がわかりやすい位置に掲示すること
※具体的には、非常口や避難ハシゴなどの設置など
2.客室
・1客室の延べ床面積が33㎡以上であること
※宿泊者が10人未満の場合は、1人当たり3.3㎡
・階層式寝台(2段ベッド)を有する場合は、上段と下段の間隔が、概ね1メートル以上であること
・客室や共用部分に十分な照明が確保されている必要があります
・適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること
・寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること
3.洗面設備等
・台所、浴室、便所、洗面設備を設置すること
※各設備の設置個数は、施設の定員に合わせて適切な数とされています
・周辺住民への配慮
騒音やゴミ問題など、周辺住民への影響を最小限にするため、自治体によって定められた範囲の住民への説明、苦情に対応できる体制の整備が求められます。
・衛生管理と安全管理
宿泊施設として提供する住宅は、定期的に清掃を行い、衛生状態を維持する必要があります。また、火災や地震などの災害対策も重要です。
施設完成後に、これらの構造設備が基準に適合しているかどうかの検査がありますので、許可を得るたには、これをクリアする必要があります。