深夜酒類提供飲食店営業、主なルールやポイント

居酒屋、バー、ガールズバーなど…
飲食店営業のうち、客に酒類を提供する営業で、その営業の常態として通常主食と認められる食事を提供して営むものを除いた営業を、“酒類提供飲食店営業”といいます。
この酒類提供飲食店営業が、深夜0時から午前6時までの時間帯に行われる場合に“深夜酒類提供飲食店営業”となり、その営業を開始する10日前までに、都道府県公安委員会に営業開始の届出をしなければなりません。
この場合の“酒類”とは、アルコール分1度以上の酒類を客に提供することをいい、提供する酒類の量は問いません。

■深夜酒類提供飲食店営業の概念
風営法第二条第13項第四号で、“飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。以下「酒類提供飲食店営業」という。)で、午前六時から午後十時までの時間においてのみ営むもの以外のもの”という規定があります。
この中の“営業の常態として通常主食と認められる食事を提供”の解釈については、営業時間中に常に主食を提供している店であることを指します。
例えば、1週間の中で平日のみに主食を提供する店や、1日の中で昼間のみ主食を提供している店等は、これに該当しません。
つまり、客が飲食している時間の大部分で主食を提供していることを意味しており、大半の時間は酒を提供して、最後にお茶漬け等を出す程度の場合も該当しません。
また、“通常主食と認められる食事”とは、社会通念上主食と認められる食事をいいまして、より具体的に説明しますと、米飯類、パン類(菓子パン類を除く)、麺類、ピザ、お好み焼き等が、これに該当します。
ですので、居酒屋やバーなどは、当然お酒をメインで提供することになりますから、この業態で深夜に営業するならば、“深夜酒類提供飲食店営業”の許可が必要になります。
対して、深夜でも営業しているファミレスやラーメン屋、牛丼屋等で、メニューの1つにお酒を提供していても、これらの営業形態はあくまで食事の提供がメインですから、深夜酒類提供飲食店営業の許可は不要なケースが多いです。
ただし、何処から何処までが深夜酒類提供飲食店に該当するかは、自己判断ではなく所轄の警察署に判断をして頂くのがベストです。
お店を経営する側では食事をメインにしているつもりでも、焼き鳥屋、小料理屋などでは、お酒を伴う形態であるのが一般的なため、最終的なジャッジは所轄の警察署の判断になります。

■深夜酒類提供飲食店営業の主なルール
深夜酒類提供飲食店営業では、主に風営法のルールが準用されています。
その主要なルールを見ていきます。

1.飲食店営業許可の取得
・深夜酒類提供飲食店営業届出を行うには“飲食店営業(食品衛生法)”の許可証が必要です。
よって、届出に先立ち、保健所に飲食店営業許可申請を行い営業許可通知を受け、飲食店営業許可証を受領した後に、本届出を行う必要があります。

2.接待の有無
・接待を伴う飲食店は風俗営業の1号営業に該当するため、深夜酒類提供飲食店営業は出来ません。
・風俗営業の1号営業と深夜酒類提供飲食店営業の両方を同時に行うことは出来ません。
よって、接待営業か深夜酒類提供のどちらを選ぶか必要があります。
※接待の解釈や判断基準については、1号営業のページをご参照下さい。

3.店舗・客室の構造設備要件
・客室が複数の場合、床面積が1室9.5㎡以上
※客室が1室のみの場合は制限なし
・客室の内部に見通しを妨げる設備がないこと
※原則、高さ1メートル以上のもの
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
・客室の出入口(営業所外に直接通ずる出入口は除く)に施錠の設備を設けないこと
・客室内の照度が20ルクスを超えること(スライダックス等の調光機能は原則として許可されない)
・不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せるなど、客に遊興させないこと
・騒音と振動の数値が条例で定める数値以下であること

4.地域要件
■風俗営業が出来ない用途地域
・第一種住居地域など、“住居”付く住居系地域では風俗営業は出来ません。

■保全対象施設による地域制限
・保全対象施設とは、風俗営業による有害な影響を受けないように、一定の距離規制による保護を受ける施設です。
概ね、営業所から100メートルの区域を限度として、その区域内の地域につき指定されます。
しかし、保全対象施設の指定や規制距離は都道府県によって異なるので、それぞれの条例を確認する必要があります。
※保全対象施設の駐車場も含まれる場合もあります。

■主な保全対象施設
・学校
幼稚園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校など、学校教育法第1条で“学校”とされる施設。
・病院
医療法の定義によると、病院とは医師や歯科医師が患者に医療を提供する施設のことで“患者20人以上の入院施設を有するもの”を病院と言い、その他のものを診療所と言います。
・診療所
入床施設が0~19人まで施設を“診療所、クリニック、医院”と呼びます。
診療所は病院と比べると規模が小さくなるので、距離規制はやや緩くなります。
・児童福祉施設
助産施設、保育所(認可保育園)、児童養護施設、児童厚生施設などの施設。
もう1つ、慎重な判断が必要なのが公園です。
公園の中でも、児童遊園に該当するものは、児童厚生施設に含まれます。
営業所の近くに公園がある場合は、都市計画課に確認を取る必要があります。
・図書館
地方公共団体などが設置する公立の図書館、及び社団法人などが設置する私立の図書館。
図書館の所在で注意が必要なのが別の建物の中にある図書館です。
役所の中に図書館が存在するケースなどがありますので、細心の注意が必要です。

5.遊興行為とは
深夜酒類提供飲食店営業での遊興行為に関しても風営法に規定されているルールが適用されます。
遊興行為とは、カラオケなどを設置することそのものを指すのではなく、お店でのイヴェントや催しを開催する行為を指します。
例えば、ステージを設置カラオケ大会やバンド演奏などです。
カラオケの設置そのものは遊興行為にはなりませんが、客にカラオケを積極的に勧めたり、(店員と客が)デュエットするような行為は“接待”に当たる可能性があります。
※接待の解説については、別の記事で書いております。

6.営業に於ける禁止事項
深夜の営業に際して、下記の禁止事項があります。
・22時から翌日の日出まで、18歳未満の者を接客業務につかせる
・22時から翌日の日出まで、18歳未満の者を客として立ち入らせる
※保護者同伴などの場合を除く
・20歳未満の者にお酒やタバコを提供すること
・0時以降の客引き行為

7.従業者名簿の備え付け
深夜酒類提供飲食店営業は、全スタッフの名前や住所などを記載した“従業者名簿”を店舗に備え付けることが義務化させています。
また、この従業者名簿は、スタッフが退職した後であっても、退職後3年経過するまでは、備え付けておかなくてはなりません。
主な記載事項は、下記のようになっております。
・氏名
・性別
・生年月日
・住所
・本籍(外国籍の場合は、その国籍)
・採用年月日
・退職年月日
・従事する業務の内容

8.ゲーム機の設置について
ダーツやゲーム機など、射幸心を煽るゲーム機の設置は、風俗営業と判断される場合があります。
この判断基準としては、お店にゲーム機等が設置される場合に、(ゲーム機等に)使用される床面積が、客席床面積の10%を超えているかどうかで判断されます。
風営法では、“10%ルール”と呼ばれ、少々複雑なルールですので、こちらは別途解説記事を書いていきます。