ハードルは高いが人気あり! 在留資格“経営・管理”について

今回は、外国人の方が日本で会社経営や事業を始めたり、組織の管理業務に従事するための在留資格“経営・管理”について書いていきます。
申請許可のハードルは高めな在留資格ですが、意外とご質問やお問い合わせが多いビザでもあります。
その様々な要件を順に見ていきます。

■“経営”と“管理”の違い
経営管理ビザの“経営”とは、事業に関する業務執行や業務監査など、事業運営を行う活動を指します。
具体的には、会社の代表取締役、取締役など…いわゆる役員の職に就く場合です。
これに対して、“管理”とは、内部組織の管理業務に従事する職員としての活動を指します。
具体的には、会社の部長、工場長、支店長など組織の各部門を統括する職に就く場合です。

■外国人が経営者となる“経営”のビザ取得要件
1.事業を営むための事業所として使用する事務所や店舗が日本国内に確保されていることが必要です。
●“事業所”についての要件
事業所については、原則として事業を営むにあたり、専有する独立したスペースを有していること。
併せて、製品やサービスの提供が継続的になされている必要があります。
事業所の手配や銀行口座の開設など、経営管理ビザの申請人が、まだ海外に居住している場合は、日本国内にいる協力者に依頼して、諸々の手続きや、会社の設立では一時的に共同代表取締役になって貰うというのが一般的です。

●バーチャルオフィス
オフィスを借りるためのコストを抑えるために、バーチャルオフィスの利用を考える方もいると思いますが、基本的にバーチャルオフィスでは経営管理ビザ取得に於ける事業所としては認められません。
経営管理ビザ取得に必要な事業所として、総務省が定める定義は…
・経済活動が、単一の経営主体(会社)に於いて、一定の場所つまり一区画を占めて行われていること
・財又はサービスの生産と供給が、人及び設備を有して継続定期に行われていること
このように定められていまして、バーチャルオフィスでは、これらを満たすことが出来ないためです。

レンタルオフィス
レンタルオフィスを事業所として、経営管理ビザを取得することは可能ですが、下記の条件を満たす必要があります。
・一定以上の広さがあること
在庫を伴わない事業の場合は、それほど大きな事業所は必要ありません。
しかし、大量の在庫を抱えるような事業の場合は、在庫を保管できるだけのスペースや外部に倉庫などを借りる必要があります。

・設備が整っていること
PCや、コピー機、電話など、事業を始めるにあたり最低限の設備が必要になります。
また、郵便受けや看板、標識の設置も必要で、実際の審査に於いて、これらがチェックされます。

・明確な仕切りがあること
壁やドア等で、明確に他のスペースと区分けされている必要があります。
よって、友人・知人が借りている共同事務所は経営管理ビザの事業所としては認められません。
しかし、建物の入り口が共用だとしても、物件の構造上、建物内に通路などがあり、完全に個室として区切られているような場合には、許可される可能性はあります。
ただ、個室でも壁の上部まで仕切りがなく、他の部屋の話し声が筒抜けになるような場合は、認められないと思います。

●自宅を事業所として利用する場合
自宅を経営管理ビザ取得のための事業所として利用したい場合は、マンションか一戸建てかで、大きな違いがあります。
・マンションの場合
自宅がマンションの場合、事業所としては認められません。
仮に、広い物件にお住まいで、居住スペースと、事業を行うスペースを明確に分けたとしても、難しいと思われます。
また、マンスリーマンション等を借りた場合も、同様に事業所としては認められません。

・一戸建ての場合
自宅が一戸建ての場合は、間取りにより事業所として認められる可能性があります。
その間取りとは、例えば建物の1階部分を事業所スペース、2階部分を居住スペースとした場合です。
理由は、事業所スペースと居住スペースの密着度が低いと判断されるからです。
ただし、1階部分が居住スペースで2階部分が事業所スペースの場合、建物の外の階段などから2階部分へ入ることが出来る構造であれば許可される可能性がありますが、1階の居住部分を通って2階の事業所へ上がる構造だと許可が下りません。

●店舗型ビジネスの場合
マッサージ店や飲食店など、店舗型ビジネスの場合は、 店舗の接客スペース以外に、仕切られた事業所スペースが確保されて、その店舗を本店所在地として登記すれば、改めて外部に事業所を設置する必要はありません。
しかし、店舗内でスペースを確保出来ない場合は、外部にレンタルオフィスのような事務所を借りることになります。

2. 事業の規模が、下記のいずれかに該当していることが必要です。
●経営管理者以外に、2名の常勤従業員を確保していること
この場合の従業員は、日本国内に在住している日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者に該当する者になります。
また、所定労働時間を通じて勤務する労働形態で雇用する必要があり、短時間労働者、パートタイムによる雇用は認めれらません。
従業員の確保を証する資料としては、身分を証する住民票の写し及び労働条件の明示した通知書、契約書等が必要とされます。

●資本金の額又は出資の総額が500万円以上
500万円以上の資本金ないし出資金の出資者は、経営管理ビザの申請人に限定はされていませんが、申請人以外が出資者となっている場合は、その経緯等の説明が求められることが多いです。

“2人以上の常勤従業員又は500万円以上の出資”の要件の趣旨として、500万円以上の出資は、2名以上の常勤従業員の雇用に相当すると考えられているため、例えば出資額が500万円に満たない場合でも、常勤従業員をを1名確保出来れば、250万円以上の出資で、この要件に該当すると認められる場合もあります。
また、適切な出資があれば、申請人1名でも事業を行うことは可能ですが、経営管理ビザの申請人の職務内容は、あくまで経営と管理業務ですので、例えば店舗や作業場を必要とする事業では、現場労働との兼任は認められないため、常勤従業員の確保が必要になります。

3.事業に安定性と継続性があることが必要です。
事業の安定性と継続性が客観的に認められるために、事業開始に至った経緯、申請人の来歴、サービスの概要、市場動向、収支計画などを明記した事業計画書を提出することになります。

■外国人が管理者となる“管理”のビザ取得要件
上記の事業所確保の要件、事業規模の要件に加えて、下記の要件を満たす必要があります。

1.事業の経営又は管理について3年以上の実務経験を有することが必要です。
3年以上の実務経験については、大学院での経営又は管理に関する科目の専攻期間を実務経験期間に算入することが出来ます。
この場合、専攻科目や期間が明示された履修証明、学位証明等にて証明することになります。

2.日本人と同等額以上の報酬を受けることが必要です。
経営管理ビザの申請人と同じ業務を行う日本人従業員と同等か、それ以上の報酬を受けることを義務付けています。
“管理者”として経営管理ビザを取得するケースとしては、上場企業などのように、大規模な企業の管理者が想定されています。

かばしま行政書士事務所では、ビザ申請全般を承っております。
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